2005年6月08日<memory>
理事長予定者への希望、失望、謎、そして山のような要望[2005/06/08]
0. イントロダクション
人間というのは、誰でも多かれ少なかれ間違いを犯すものだ。細心の注意を払っ
ても、気がつくと後で自分でも驚くような間違いをしていることすらある。また、
自分では、その時、間違いであることが分からずにいることもある(私も、
もちろん、例外ではない)。
間違いを犯した時、どのように行動するか、というのが、ある意味で人間の試金石となる。
タイプで分ければ:
(1) 陳謝して改める。
(2) 黙って改める。
(3) 本当は間違った、と後で気づいても、間違いを認めない。
(4) 周囲が何と言おうとも、自分は間違いは犯さないと信じている。
さらに、上述の(3) には、もう1つの、ニュアンスの異なった変種がある。
(5) 間違っていることは初めから知っているが、自分は正しいと最後まで
言い通す。
(1) は、社会的マナーにかなった本来の人間行動であろう。しかし、場合によっ ては、(2) ということもある。学問の世界では、誤った事を主張しても、 陳謝する必要はなく、あれは間違いだったと公言して、訂正すればよい。 もちろん、科学者が道義的責任を問われるような間違いを犯したら、それは当然、謝罪してしかるべきである。
問題は、(3)〜(5) のようなケースだ。(3) は、それでも内心間違ったことを意識 しているからまだましだが、罪深さは相当なものである。 (4) は、一番手におえない。頭が固い、というか、 自分を絶対視しているから、周囲に大いに迷惑をかける。そして、 (5) は確信犯であり、嘘つきである。
人の上に立つものは、自分が絶対的な権力者として好きなことができる、などと 思い上がってはならない。「人間は、間違いを犯すもの」という現実を謙虚に受 け止めることが期待されているはずだ。
世の中を見回してみると、(3) から (5) のタイプが今現在の指導者層に多いような気がする。 特に、政治家の言動を見聞きしていると、そう感じる(誰がどのタイプとは言わないが)。
1 2004年2月17日
「新大学」の理事長予定者,高橋宏氏が管理本部の宮下参事を連れて2004年2月
17日に都立大にやってきて,
部長会メンバーと会談し,さらに評議会メンバーも加わった集まりにも
参加した。「やさしいFAQ」D-6
にあるように、当時、
法的根拠のない「意思確認書」
をめぐって都立大教員と大学管理本部の対立が続いていた。
「意思確認書」は、2004年2月16日が締め切りだった。
総長は、以下のような要請を2月24日に発表。この中で、総長は学長予定者や理事長
予定者の来学を求めている様子が分かる。また、
理事長予定者が「こういう話し合いはどんどんやりたい」と発言したことを伝えている。
東京都立大学 全学教員各位
要請:「就任意思確認書」への対応について(緊急)
2004年2月24日
総長
マスコミ報道等によって判断すると、「意思確認書」の未提出者はこれを提出せよ
(またもしかすると、提出しない者は新大学に参加できないといった趣旨の文書など
も添付して)という要求があらためて来るのではないかと予測されます。
○総長は、2月23日の教学準備委員会に招請されたので出席しました。その際、西
澤学長予定者はその冒頭挨拶において大学教員との話し合いの重要性に言及し、また
会議の終了間際のある委員の要請にこたえて、多忙の身ではあるが、できるだけ大学
に行き、教員と直接に話し合うという意向を示されました。
○高橋理事長予定者が先般、大学に見え、部長会、評議会メンバーと懇談した時に、
こういう話し合いはどんどんやりたいと発言され、その後の総長の発信したメールに
も3月上旬にはまたあのような機会をもちたいという意向を示されています。
○そこで総長としては、可能な限り早く学長予定者が大学に来て話し合いをしてくだ
さるよう要請します。
同時に理事長予定者にも同様の要請をします。
●「意思確認書」のあらためての提出要求があった場合(もともとこのような書類は
文科省および設置審運営委員会における教員審査の必要か不要か判断の段階では不必
要であり、新大学への移行の意思のある教員の「見込み数」だけが当面必要なのだと
いうこと、文科省もこの種の書類の提出を求めているわけではないことは、すでにご
理解いただいていると思いますが)、学長予定者、理事長予定者の来学要請の結果を
まずは見守ることにしていただきたく、一筆したためたしだいです。よろしくお願い
します。
以上。
2 2004年3月4日
その後、
再三に渡る締切日の延長(2月27日締め切り,3月6日締め切り)が行われ、
期待されたトップ会談(3月8日に総長,理事長予定者,学長予定者,管理本部長)
は、なぜかキャンセルされた。最初は、学長予定者の都合がつかない、
という連絡が入り、次に以下の「Fwd: Fw: Fwd: 大至急!理事長からのご連絡です」
というメールが [Date: Thu, 04 Mar 2004 20:12:39 +0900] に舞い込んできた
(個人情報保護の観点からメールアドレス等は、伏字にしてある)。
各課長・事務長殿
下記のメールを所属教員に大至急周知方よろしくお願いいたします。
事務局長
>
> xxx_xxx@xxx.xxx.tokyo.jp さんのコメントを転送します:
> たったいま高橋理事長予定者がU-clubの発起人会を終えて
> 大学管理本部へお見えになりました。
>
> そこで、また次の所用があって、メールを打っている暇がないため、
> 都立大学のみなさんにお伝えしてほしいという言葉をいいつかりましたので、
> お送りします。
>
> 大至急、学内にご周知ください。
>
> 大学管理本部
> 副参事(改革推進担当)
>
> xxxx xxxx
> TEL:xxx-xxx-xxxx
>
>
> 都立大学教員のみなさんへ
>
> 理事長予定者の高橋です。
> あいにく、明日は終日病院へ行き、9日は朝からシンガポールに
> 飛ぶこともあり、8日は一日中重要な打合せにまわることになりました。
>
> したがって、
> 8日に予定していた、都立大学への訪問はできなくなりました。
>
> 皆さんの善意は信じていますが、首都大学東京に参加する意思のある方は、
> 可及的速やかに、本部宛に意思確認書を提出してください。
>
> その上で、参加していただく意思を表明した方とディスカッションする用意は
> あります。
>
> よろしくお願いします。
>
> 都立大学事務局 xxx xxx
> xxx@xxx.ac.jp
>
xxx xxx xxx-xxx@xxxxx.ac.jp
都立大学xxxx学部事務室
TEL xxxx-xx-xxxx FAX xxxx-xx-xxxx
都立大学xxxx学部事務室
xxxx係 xxx xxx
TEL xxxx-xx-xxxx
FAX xxxx-xx-xxxx
3 淡い期待
2004年2月17日に理事長予定者が都立大にやってきて、ざっくばらんに話をして
いったという知らせは、「就任承諾書」に関する押し問答の中で、教員達に
かすかな期待を抱かせた。それ以上に、大学執行部の人達は、期待していただろ
う。<今後は、毎月一回、大学に来て話し合う>という言葉が出たという噂も
あっという間に広まり、雪解けムードがただよった(もちろん、慎重に事態を見
極める必要があるし、簡単に信じられないぞ、という意見も聞かれた)。
しかし、上のようなメールが突然舞い込んで、トップ会談はキャンセルされ、 結局、高橋理事長予定者は、2005年2月9日に インターンシップ関係のビデオ撮影のために都立大に来学するまで、ついに 姿は見せなかったようだ。この間、およそ一年の時間が過ぎていた。
なぜ、2004年3月8日の都立大でのトップ会談は実現されなかったのだろうか? これには、「知事側近からの強力な意見」があったという噂もある。 噂は噂。真相は闇の中である。折しも、知事側近が次々に辞任という事態になっ ている昨今、ひょっとして、と考えてしまう。
淡い期待は、みごとに水泡に帰した。しかし、理事長予定者の<ざっくばらんな気質>は、 多いに当時の大学執行部の教員の心を動かしたことは間違いない。そして、 その後に残ったのは、大きな失望だった。
『財界』2004年6月8日号に載った理事長予定者のインタビュー記事には、 以下のような下りがある。
首都大学東京を設立する趣旨に賛同しています。しかし石原知事も時々、方向を
誤ったり、手法が荒っぽかったりします。その時、石原慎太郎にノーと言えるの
は天下広しといえども私しかいないでしょう(笑)。
教員の中には思想も違い改革に反発している人もいますが、その方々には私(高
橋)を信じて下さいと申し上げました。
(『財界』2004.6.8, P.80)
4 理事長への要望、要望、そして要望
さて、首都大学東京が発足し、理事長予定者は、無事に理事長として就任し、
実務についているはずである。理事長は、教員と話し合っているのだろうか?
聞こえてくるのは、オープンユニバーシティの受講費をコンビニで払える、
というような話題だけだ。もっとも、法人がスタートしてまだ間もないから、
これからの手腕を見させてもらうしかないだろう。しかし、当初伝えられた発言のように、
<教員と話し合ってよい大学を作っていく>という基本姿勢を言葉だけでなく、
実行に移して頂きたい。
そして、たまには、知事からの要請に、「ノー」と言ってもらいたい。 たとえ淡い夢だったにせよ、理事長への期待は、大きかったし、きっと今でも 「地方独立法人首都大学東京」の傘下にある都立5大学の教員にとっては、大きいのである。
先日流れた傾斜的研究費の配分に関しても、都立大所属の教員(首大非就任者) を閉め出すような方針をストップできるのは理事長であろう。 結果的には、都立大所属の教員(首大非就任者)が研究分担者にはなれるように なったようだが、研究代表者になぜなれないのか。 ここは、<ひとつ太っ腹な決断>を理事長自らが下すことを求めたい。
大学管理本部が消滅寸前の状態にあっても、結局、管理本部の実務をしていた 人達が、法人の下で働き出すという話を聞いている。管理本部から法人に変わっ ても、結局何一つ変わらない、というようなことでは困る。 法人は都とは独立して個性を発揮してもらわねばなるまい。
理事長にあっては、 『財界』に載ったインタビュー記事のさまざまな間違いに気づき、認識を新たにして頂きたい。 冒頭で述べた (3)〜(5) のタイプの指導者にならないように、お願いしたい。理事長の采配ひとつで大学全体が大きく動くシステムになってしまったのだから、 皆が理事長の動きや発言に注目しているはずだ。今こそ月に1回の定例記者会見でも開いて、 「地方独立法人首都大学東京」は何をやっているのか、是非、明らかにしてもらいたい。 さまざまな問題点を、みずから明らかにし、改善策を打ち出していくという姿勢こそ重要だと考える。