2005年6月27日,28日<news>
東京都立大学は、すでに消滅していた!? [2005/06/27][2005/06/28]
1. 国家公務員1種試験の大学別合格者数
6月22日の朝日新聞には、「1種試験合格者 私大出身は最多」という記事が掲載
された。これは、人事院が6月21日に05年度の国家公務員1種試験の合格発表を
したことを受けての記事なので、さまざまな新聞に掲載されたはずだ。そこには、
以下のような右列に奇妙な注釈付きの表が掲載されていた。
■ | 大学名 | 05年度 | 04年度 | ||
国 | 1 | 東京大 | 454 | 498 | |
家 | 2 | 京都大 | 191 | 221 | 〜 |
公 | 3 | 早稲田大 | 128 | 125 | 首 |
務 | 4 | 北海道大 | 74 | 60 | 都 |
員 | 5 | 慶応大 | 73 | 85 | 大 |
1 | 6 | 東北大 | 59 | 67 | 学 |
種 | 7 | 九州大 | 54 | 73 | 東 |
試 | 8 | 名古屋大 | 47 | 30 | 京 |
験 | 9 | 大阪大 | 46 | 46 | に |
の | 10 | 東京工業大 | 45 | 50 | は |
出 | 11 | 立命館大 | 42 | 36 | 旧 |
身 | 12 | 東京理科大 | 38 | 30 | 都 |
大 | 13 | 一橋大 | 33 | 33 | 立 |
学 | 14 | 中央大 | 30 | 35 | 大 |
別 | 15 | 神戸大 | 28 | 42 | 出 |
合 | 16 | 筑波大 | 21 | 20 | 身 |
格 | 17 | 東京農工大 | 18 | 20 | を |
者 | 18 | 岡山大 | 17 | 14 | 含 |
数 | 19 | 首都大学東京 | 14 | 6 | む |
■ | 19 | 同志社大 | 14 | 9 | 〜 |
ここには3つの疑問がある。
(1)首都大学東京には1年生しかいないので、合格者の大多数(おそらくすべて)は都立大生ではないのか。
(2)首都大学東京の合格者がゼロであるとすれば、括弧書きは「含む」いう言葉の誤用ではないか。
(3)現存する大学に対して、「旧」都立大という表現は不適切ではないか。
2. 問い合わせた人からの連絡
この記事を見て、不思議に思った人が、朝日新聞に問い合わせをし、
その一連の結果を報告してくれた。その報告によると:
朝日新聞の担当者は、記事を書いた記者に問い合わせ、以下のことが判明した。
◎ 「今回の記事は、人事院の発表のもの(=ランキング)を、ほぼそのまま使用した。」
さらにこの担当者は、人事院にも問い合わせてくれ、その結果を知らせてくれた。
(1)人事院には、もはや旧4大学のコードはなく、すべて首都大学東京のコードで管理している。
(2)首都大学東京という法人の合格者数を発表した。
(3)首都大学東京の合格者の内訳は・・・。
朝日新聞の担当者は
(1)「旧」都立大という表現は適切でなかった。
(2)常識的に考えて、合格者は全員都立大生でしょう。
といって、以後気をつけていきたいと語ったそうだ。
実際には、こんなにすらすらと話が進んだわけではないようで、 紆余曲折があったようだ。 その中には、 「4大学が合併したのだから、首大には4年生までいるのではないか?」という誤解や、 「都立大の学生は希望すれば首大生になれるのではないか」という常識はずれの意見、 さらに 「国家公務員1種試験は年齢制限がないから、たとえ1年生でも受けられる。 だから、首大生も含まれている可能性があるのではないか」 という憶測が語られたらしい(首大<暫定>大学院生が合格している可能性も、 否定はできない)。なお、人事院では、(3)の文の後半部分は、 把握していないらしい(後半は聞き取れなかったとのこと)。
*******************[06/28/05]追加分 (1) begin*********************************
6月28日には、2名の方からメールを頂いた。その結果、以下の事が判明した。
(1) 首大(暫定大学院)で、国家1種に合格した学生が少なくとも1名、確認
された。
(2) 現大学に在籍の教員(=首大に就任していない教員)に対しては、
科研費等の申請に際し大学コードを「9999」(その他)
で書類を作るようにと事務から指示が出ている。
(3) 日本学術振興会の書類では、都立大教員(=首大に就任していない教員)
を受け入れ研究者とする学生は、その教員の所属をその他の「9999」
として記入して提出した。
ということで、都立4大学の大学コードが抹消された、
という噂はどうやら本当だったようだ。
*******************[06/28/05]追加分 (1) end ***********************************
追加分 (2)へ
同日(6月22日)の他の朝刊(読売、毎日、日経、産経、東京)を調べた結果、 国家公務員1種試験に関して報じたのは、朝日新聞以外では、産経新聞のみであった。 しかも「国家公務員1種試験:私大出身の合格者最高」というタイトルで、 首都大学東京に関する言及はなかった。
3. 問題:公式な書類上で、都立4大学の名前を消してよいのか!
問題は、「人事院では、すでに都立4大学の名前が使われていない」らしい、
ということだ。すでに、「首都大学東京法人」ということで一括して扱われ、
その結果、東京都立大学も東京都立科学技術大学も、東京都立保健科学大学も、
東京都立短期大学も書面から消えているらしいのだ。
この点に関しては、
人事院のホームページ等で正式に確認が取れているわけではないので、
断定はできないが、かなりもっともらしい情報である。
さらに、 文部科学省(?)での東京都立大学のコード番号はすでに消滅し、 東京都立大学所属の教員の所属は9999(その他)となっているという噂がある。 2010年度末まで、東京都立大学は存続するのではなかったのか? 本当に「東京都立大学のコード番号」が抹消されたのか否か、 そうだとしたら、東京都立科学技術大学や、東京都立保健科学大学、 東京都立短期大学のコードもすでにないのだろうか? 最終的な真偽のほどはまだわかっていない。
思えば、法人の名前の決定の際に、 「首都大学東京」という大学名をそのまま取り入れた法人を作り、 5大学を管理すると言ったあたりからあぶなかった。 今回の国家公務員1種に合格したのは、明らかに東京都立大学の学生 であろうが、「首都大学東京」の学生と誤解され、 報道されてしまうのは、可愛そうな気がする。 いや、ただ可愛そうというより、明らかに筋違いだ。 公式な書類上で、都立4大学の名前を消してよいわけがない。東京都は、 強い反対にもかかわらず、都立4大学の条例を一旦廃止したあとで、 再設置の条例を出したはずだ。都立4大学は、決して「旧大学」ではない。 学生もいて、現存する大学だ。
4. なし崩し的に首大の名前にすげ替える:これはおかしい!
各種の書類上で、東京都立大学という名前が削除され、
気がつくと、すべて「首都大学東京」という名前になって行くような気がしてならない。
なし崩し的に、すべて「首都大学東京」の手柄のように宣伝されることに、
私は強い嫌悪感を覚える。
実は、私を含め、都立大学を去った非常に多くの教員は、 今でも都立大の学生のための授業を、 非常勤(兼任)講師としてやっている(その結果、「首都大学東京」は、 この2005年4月から、非常勤講師に非常に大きく依存した教育・研究体制でスタートしている)。彼らは、あくまでも、 都立大生に対しての教育責任をまっとうしたい、という意思を持って、 転出後も時間のやりくりをして都立大へ来ているのだ。
しかし、今回のようなことがあると、ひょっとして「都立大」と「都立大生」のためではなく、 首大と首大生のために働いていると書面上はなっているのではないか、という疑心暗鬼に陥った。
そこで、普段はほとんど見ない給与明細書を見て、唖然とした。 そこには、私の所属が 都市教養学部 人文・社会系 国際文化コース となっているではないか! そんなバカな! 普通、他大学所属の人間は、兼任講師と呼ばれ、 所属は授業を行っている大学の学部学科になる。つまり、私の場合は、 「東京都立大学人文学部文学科兼任講師」であるはずだ。 い…いつの間に。なし崩し的に、 すべてを「首大」の名前にすげ替えるやり方に、今さらながら怒りを覚える。
思えば、首大というのは、
単位バンクにしても、英語教育の外注にしても、「他人のふんどしで相撲をとる」
ことが、もともと好きなのだろう。そう言われたくないのなら、
首大も他力本願ではなく、
ちゃんと自ら教育や研究の環境を整えることを考え、
他の大学が驚くような内容のある教育研究プログラムを発表し、
勝負すべきだ。
*******************[06/28/05]追加分 (2) end *********************************