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top[2005/05/08]Mr. K からのメール:ある学生処分問題と都立大執行部の姿勢組合の中央執行委員会の声明(2001年2月27日)

東京都立大学・短期大学教職員組合による「2000年度活動経過報告」(2001年6月29日発行)P.95-97

2001年1月26日の I 君に対する総長による「制裁的教育指導措置」を非難する声明

           2001年2月27日 東京都立大学・短期大学教職員組合中央執行委員会

 学内の任意団体であった東京都政策研究会(以下「都政研」と略します)の代表者 I 君(遺憾ながら氏名が公表されていますが、組合としてその措置は不当だと考えるので、以下 I 君とします)に対して、総長は評議会の議に基づき、1月26日に、厳重注意と自宅謹慎7日を申し渡したうえで、告示をもってその氏名を公表しました。それに至る事実経過は別掲のとおりです。
 この「制裁的教育指導措置」は、いくつかの点で、大学の自治の原則の根幹を侵害しているものと思われます。私たち大学に働く教職員にとっては大学の自治は職場の基本的環境そのものであり、直接の労働条件をなすものですから、この措置が直接には学生に向けられたものであっても、私たちの働く環境に重大な悪影響があるものと判断せざるを得ません。このような考慮から、組合はこの一ヶ月ほど、慎重にこの件に取組み、調査を重ねてきましたが、ここにその問題点を指摘し、総長、評議会、事務局の猛省を求めるものです。

(1)何といっても今回の措置は、一都議会議員による不当な圧力に屈して行われた点で、大学の自治の死と言ってもよい大変な汚点を都立大学の歴史に残したものです。教育基本法第10条第1項が、「教育は、不当な支配に屈することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」と規定しているところにも違背する暴挙といってよいでしょう。
(2)このような大学の危機に当たって、本来大学執行部を支えるべき事務局は、むしろ議員からの脅迫的言辞におびえて、執行部を支えるどころか、I 君を処分して事態を沈静化するように総長・評議員に懇請しました。事務局長は去る2月13日の改革に関する全学説明会で「設置者の守備範囲などという議論をしているときではなく、行政と大学が一体となって改革を進めていくべきだ」などと発言していましたが、こんなことで果たして事務局を信頼して一緒に大学改革を進めていけるでしょうか。
(3)以上のような状況のため、今回の I 君に対する措置は、これまでの類似の先行事例に較べても不相応に厳しい措置となっています。特に多くの人たちを驚かせているのは、学生部長と人文学部長の反対を押し切って総長が I 君の氏名を公表してしまったことです。これは制裁的な「教育指導」措置ということですが、こうした見せしめのような措置がどうして「教育」的と言えるのでしょうか。また、自宅謹慎 7日を課していますが、謹慎の措置は、文部科学省見解によっても懲戒処分である停学と同等であるとされており、今回の措置が、あくまで処分ではない「制裁的な教育指導措置」であるという執行部の言い分の欺瞞性がうかがわれます。
(4)しかも外部の不当な圧力を意識して、総長・評議会は、「学則第73条及び大学院学則第31条に基づく懲戒処分その他の制裁的措置の運用内規」(以下「内規」と称します)の規定を大きく踏み外し、しかも4日という短期間のうち3回もの評議会ないし評議会懇談会を開催するという無理を重ねて、拙速のうちに結論を出した点で、手続的正義を尽くしたとは到底いえない措置となっています。

 即ち、1月18日の人文学部教授会が審査委員会の設置を拒否するや、評議会は、人文学部に再度付議しても、また学生委員会に審査委員会を設置する措置をとっても、いずれも議員を満足させるような結論に至らないことを心配し、人文学部の拒否決定によって手続が停止したとの理解を採用して、評議会自らが超法規的に手続きすることを決定し、その際なるべく内規の手続に似せた手続を踏んで進めることにしたのですが、手続を急ぐあまり、内規に言う「審査報告書」にあたる文書も存在しない結果となっています。これでは一体いかなる行為がいかなる理由に基づいて制裁的な措置に値する非違性があるものと判断されたのか、I 君にせよ他の学内の主体にせよ、事後的に吟味することができません。手続的正義というものに対する非常識的な感覚と評さざるを得ません。
 評議会は、この、改革などを抱える大変な時期に面倒な問題が起きたことにいらだっていたようであり、可及的速やかに事態を収拾しようとの考慮が全面に出ています。理を尽くした議論は必ずしも行われず、超法規的な措置の不当性を批判しようとする発言を迷惑視する人もいたとのことです。ここでは大学の自治とか言論の自由とかいった、より一層大変なことが問題になっているのであり、ことがかくも重大であるという緊張感が評議会には欠けていたものと思わざるを得ません。
 総じて、このように、外圧があれば簡単にそれに屈して、不相当に重たい不利益取扱を、一応の基準とされた内規からも大きく逸脱した手続で行ってしまう、現在の執行部体制の下では私たち教職員は安心して働くことができません。今回の制裁的教育指導措置をめぐる執行部の態度は、とりわけ大学改革という大事を抱えている都立大学において、労使の信頼関係を著しく損なうものであったと考えます。
 この件で本来の処分権を持つ人文学部は、教授会において、総長、評議会の扱いに疑義を呈し、独自の調査委員会を設置することにした、と伝えられています。組合は今後も、この人文学部の動向、更には学内の諸主体の動向を注視しつつ、引き続きこの問題に取組んでいくものです。


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